頼れるのは「亡き妻の甥」だけ…でも法的には他人?入院や認知症に備えて「任意後見契約」を結んだ事例【解決事例】
- 福田 修平

- 12月2日
- 読了時間: 3分
更新日:12月16日
▼ この事例のポイント(1分で分かります)
相談者:A様(男性・妻と死別・子供なし)
お悩み:兄弟とは疎遠。亡き妻の甥Bさんが世話をしてくれているが、もし自分が認知症になったら、Bさんに迷惑をかけずに財産管理や入院手続きを頼めるか不安。
壁:甥と叔父は法的な親子関係がないため、緊急時でもBさんには銀行手続きや施設契約の権限が一切ない(赤の他人扱い)。
解決策:元気なうちに「任意後見契約(にんいこうけん)」を公正証書で締結。
結果:Bさんに法的な代理権を与え、将来の財産管理から病院のサインまで正式に託すことができました。
1. ご相談の背景:遺言書だけでは守れない「生前の安心」
今回ご相談に来られたのは、妻に先立たれ、お子様もいらっしゃらないA様です。
ご自身の兄弟とは折り合いが悪く、長年絶縁状態。そんなA様を気にかけて頻繁に顔を出してくれるのは、亡き奥様の弟の長男(甥)であるBさんでした。
A様はBさんに感謝しており、「死んだら財産は全部Bにやる」という遺言書も作成済みでした。しかし、ふと不安がよぎりました。
「死んだ後はいいが、私がボケたり入院したりした時、B君は私の預金を下ろしたり、手続きをしたりできるのだろうか?」
2. 直面していた「法的な他人」の壁
当事務所で事情をお伺いし、ハッキリと現実をお伝えしました。
「残念ながら、今のままではBさんは何もできません」
親子なら通る無理が通らない:実の親子であれば、緊急時にキャッシュカードで親のお金を下ろしたり、病院の保証人になったりすることが(慣習的に)通ることもあります。
甥は「他人」扱い:しかし、A様とBさんには親子関係も相続関係もありません。銀行や病院から見れば「法的には赤の他人」です。認知症でA様の口座が凍結したら、Bさんが窓口に行っても門前払いされてしまいます。
3. 司法書士からの提案:家族信託ではなく「任意後見」
認知症対策としては「家族信託」も有名ですが、今回はあえて「任意後見契約(にんいこうけんけいやく)」をご提案しました。
なぜ家族信託ではダメなのか?家族信託は「お金の管理」には強いですが、病院への入院手続きや老人ホームの入居契約といった「身上監護(しんじょうかんご=生活の手配)」の権限がありません。親子ならともかく、法的な他人であるBさんがA様の入院手続きをするには、明確な「代理権」が必要だからです。
任意後見契約とは「将来、判断能力が落ちたら、Bさんを私の後見人にします」と予約しておく契約です。これにより、Bさんは堂々とA様の代理人として、財産管理も、病院・施設の契約も行うことができます。
4. 実行結果:口約束を「公正証書」にして安心
Bさんも「おじさんの面倒は見るつもりだったけど、権限がないとは知らなかった」と驚かれ、契約を快諾されました。
当事務所で契約書案を作成し、公証役場にて「任意後見契約公正証書」を作成。これで将来、A様が認知症になっても、Bさんがスムーズにサポートできる体制が整いました。
5. 専門家の視点:甥・姪を頼るなら「権限」を渡しておくこと
「面倒を見るよ」という優しい言葉に甘えるだけでなく、その人が動きやすいように「法的な武器(代理権)」を持たせてあげることが、頼る側の責任でもあります。
特に「おじ・おば」の関係では、法的なハードルが予想以上に高いため、元気なうちの契約が必須です。
<遺言書は「死後」、任意後見は「老後」を守るもの>
A様のように「遺言書は書いたから大丈夫」と安心されている方は多いですが、それはあくまで亡くなった後の話です。一番長いかもしれない「認知症になってから亡くなるまで」の期間を守る対策も忘れないでください。
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