複雑な家族関係と親の認知症への備え。生前の財産管理から死後事務までを専門家に託した事例【解決事例】
- 阿南 典子 司法書士法人やまぐち中央事務所

- 7月4日
- 読了時間: 5分

▼ この事例のポイント(1分で分かります)
ご相談者:お父様の生活と財産管理を近くでサポートしているお子様(A様)
お悩み:高齢の父(B様)には複数回の婚姻・離婚歴があり、前妻・後妻との間も含めて子どもが合計9人いる。A様以外の兄弟はみな遠方に住んでおり関係も疎遠。B様に認知症などの初期症状が出始めたため、今後の財産管理や将来の相続において、他の兄弟から不信感を持たれたりトラブルになったりしないか不安。
解決策:親族間の透明性を保つための「財産管理サポート」、将来の遺産争いを防ぐ「公正証書遺言の作成」、死後の供養方法を指定する「死後事務委任契約」の併用をご提案。
結果:専門家が関与することで客観的かつ適正な財産管理体制が確立。将来の相続トラブルの芽を摘むとともに、B様が希望されていた「死後の手続きとお墓の準備」も事前に手配でき、A様の精神的負担が大幅に軽減された。
ご相談の内容
相談者のA様は、高齢になられたお父様(B様)の財産管理や日々の生活のサポートを行っていらっしゃいます。 お父様のB様は過去に何度か婚姻と離婚を繰り返されており、現在は独身ですが、子どもは異母兄弟を含めて全部で9人います。基本的にはA様以外の兄弟は全員が遠方に居住しており、普段の交流はほとんどなく、お世辞にも仲が良いとは言えない関係性でした。
最近になり、B様に軽度の認知症の兆候が見られるようになりました。A様が一人でお父様の通帳などを預かって管理している状態ですが、「このままでは将来、遠方の兄弟たちから『勝手にお金を使い込んでいるのではないか』などと疑われたり、問い合わせがきたりしてトラブルになるのではないか」と強い不安を感じ、当事務所へご相談に来られました。
問題点
今回の事例では、以下の3つの問題が重なっていました。
① 異母兄弟を含む多数の相続人と、将来の対立リスク
お子様が合計9人おり、それぞれの関係性が疎遠な場合、将来B様が亡くなった後の「遺産分割協議(財産の分け方の話し合い)」は非常に難航します。1人でも連絡が取れなかったり反対したりすると、手続きが完全にストップしてしまうリスクがありました。
② 判断能力が低下していくことへの時間的制限
軽度認知症などの初期症状が出始めているため、今後さらに症状が進行してしまうと、遺言書の作成などの法的な手続きが一切行えなくなってしまいます。対策を立てるなら今しかないという時間的な猶予のなさが課題でした。
③ 死後の供養や手続きに関する方針の不一致
亡くなった後の葬儀やお墓の管理について、残された兄弟間で意見が食い違ったり、押し付け合いになったりする恐れがありました。B様ご自身も「子どもたちに迷惑をかけたくないが、自分のお墓はきちんと決めておきたい」というご希望を持たれていました。
当事務所の対応
当事務所では、A様およびお父様(B様)のご意向を確認しながら、生前の安心と死後の円満を両立させるため、以下の3つの手続きを組み合わせたトータルサポートをご提案しました。
① 専門家による財産管理バックアップ
A様が個人で行っていたお父様の財産管理について、専門家が第三者としてチェック・関与する仕組みを導入しました。これにより、万が一他の兄弟から「財産の使い道」について開示を求められた場合でも、専門家の指導のもとで適正に管理されていることを証明できるため、A様が疑われるリスクを無くしました。
② 公正証書遺言の作成
B様の意識がしっかりされているうちに、公証役場にて「公正証書遺言」を作成しました。9人の子どもたち全員による遺産分割協議を経ることなく、どの財産を誰に遺すかをあらかじめB様自身の意思で法的に確定させ、死後の相続争いを未然に防止しました。
③ 死後事務委任契約の締結
お父様が亡くなられた後の葬儀の執り行いや、事務手続きを専門家に委任する契約を結びました。B様の一番の願いであった「死後に子どもたちが揉めないようにすること」、そして「自分が亡くなった後も、子どもたちが来たいときにお墓参りに来られるようにしてあげたい」という想いを実現するため、納骨するお墓の場所や具体的な供養方法(永代供養の手配など)を具体的に指定し、生前のうちにすべての手配を完了させました。
解決結果
生前の財産管理から、将来の相続対策、そして死後の供養までをワンストップで整備したことで、A様が抱えていた「孤独な財産管理へのプレッシャー」と「将来の親族トラブルへの恐怖」は一時に解消されました。
第三者である専門家が間に入ることで、遠方の兄弟に対する説明の透明性が確保され、家族間の不要な疑心暗鬼を生むのを防ぐ体制が整いました。また、お墓に関する具体的な生前手配を行っておいたことで、「もし子どもたちが自分を思い出してお墓参りに行きたくなったら、いつでも気兼ねなく足を運べる場所」を確保することができ、お父様であるB様ご自身も大変安心された様子でした。
ポイント
婚姻・離婚歴が複数回ある場合、前妻・前夫との間のお子様にも、現在の一緒に暮らしているお子様と全く同等の相続権(遺留分含む)が発生します。どれだけ疎遠であっても法的な権利は変わらないため、対策を怠るとほぼ確実に相続発生時にトラブルになります。
また、本事例のように認知症などの症状がある場合、対策のタイムリミットが迫っていると言えます。「まだ大丈夫」と先延ばしにせず、本人の意思能力が認められる段階で、遺言や契約の手続きを急ぐことが成功の鍵となります。
まとめ
相続人の数が多いケースや、異母兄弟・異父兄弟がいて関係性が複雑なケースでは、特定の親族だけで問題を解決しようとすると、他の親族から不審に思われトラブルが激化することが珍しくありません。
専門家を関与させて財産管理の透明性を高め、遺言や死後事務委任契約によって未来の揉め事のタネをあらかじめ取り除いておくことは、残される家族を守るための最大の防衛策です。
「うちの家族関係は少し複雑かもしれない」「将来、兄弟間で意見がまとまるか不安だ」と感じられる方は、ぜひお早めに専門家へご相談ください。


