物忘れが進む母の施設入所に備える。家族信託を活用し、スムーズな施設入所と預金管理を叶えた事例【解決事例】

▼ この事例のポイント(1分で分かります)
ご相談者:お母様の預金管理に不安を抱える長女(A様・53歳)とご主人(B様)
お悩み:一人暮らしの母親(甲様・82歳)の物忘れが進行し、施設入所を検討中。入所費用やその後の預金管理を適切に行いたいが、成年後見制度は手続きや費用の負担が大きいため避けたい。
解決策:認知症対策として「家族信託」を活用し、長女A様を財産管理者(受託者)とする仕組みをご提案。
結果:専門家のサポートにより無事に家族信託の組成が完了。その後お母様の認知症が急速に進行したが、事前に契約を済ませていたことで、施設入所費用の支払いや財産管理がスムーズに行えた。
ご相談の内容
相談者のA様(53歳)は、ご主人B様と共に当事務所へご相談に訪れました。相談の対象者はA様の母親(82歳・仮名:甲様)で、現在は一人暮らしをされています。甲様の推定相続人は長女のA様と次女のC様(東京在住)の2名であり、ご姉妹の関係性は良好です。
最近になり、甲様が不要な買い物をしたり、財布を紛失することが増えたりと、物忘れがひどくなってきたとのことでした。一人暮らしを続けることが難しい状況となり、施設への入所を検討されています。 施設入所のための資金は甲様ご自身の預金から支出し、入所後もその預金管理を適切に行っていきたいというご希望でした。しかし、成年後見制度を利用すると裁判所の手続きや費用の負担が大きくなるため、別の良い方法はないかと検討されていました。
問題点
今回の事例では、以下の点が問題となっていました。
① 認知症の進行による財産凍結のリスク
甲様の物忘れが進行しており、このまま完全に判断能力を喪失してしまうと、ご自身の預金口座が凍結され、施設入所費用を引き出すことができなくなる恐れがありました。
② 成年後見制度の負担
成年後見制度を利用すれば財産管理は可能ですが、家庭裁判所への定期的な報告義務や、専門家が後見人に就いた場合の継続的な報酬など、ご家族にとって精神的・金銭的な負担が大きいことが課題でした。
当事務所の対応
当事務所では、ご家族の負担を軽減しつつ確実な預金管理を実現するため、認知症対策として「家族信託」をご提案いたしました。具体的な内容は以下の通りです。
① 家族信託の枠組みの設計
委託者・受益者:お母様(甲様)
受託者(財産を管理する人):長女(A様)
予備的受託者:遠方にお住まいの次女C様ではなく、近くでサポートできるA様の夫(B様)に設定。
信託財産:甲様の預金
信託終了時(甲様の逝去後):残った資産は長女A様と次女C様が相続するよう定めます。
② 信託契約のサポート
当事務所にて信託契約書の作成を行い、公証役場での公正証書化、および金融機関での信託専用口座の開設までを全面的にサポートいたしました。
実行結果
当事務所が信託契約書の作成から銀行との連携、公証役場との打ち合わせまでを担当したことで、無事に家族信託の組成を完了することができました。 信託契約に基づき、A様が甲様の預金を適法に管理できるようになり、目的であった施設入所費用の支払いも問題なく行える体制が整いました。
その後、半年が経過してA様とお会いした際、「家族信託を組成した後、母の認知症が急速に進行してしまったのですが、事前に信託契約をしておいたおかげでスムーズに財産管理ができ、本当に助かりました」と、大変喜ばしいお声をいただきました。
司法書士のポイント
認知症が進行する前の「早めの準備」が鍵
家族信託は、ご本人の判断能力がしっかりしているうちに準備することで、成年後見制度を利用せずに、ご家族の事情に合わせた柔軟な財産管理が可能となります。今回のように施設入所後の支払い管理もスムーズに行うことができます。
長期的な管理を見据えた「予備的受託者」の設定
受託者には信頼できるご家族を指定することが基本ですが、万が一受託者が管理できなくなった場合に備え、予備的受託者(今回はA様のご主人)を決めておくことで、将来にわたってより安心して管理を継続できます。
ご家族全員の理解と合意
特定の家族だけが財産を管理することになるため、後々のトラブルを防ぐためにも、信託契約の内容についてご家族全員(今回は次女C様も含め)が理解し、しっかりと合意を得ておくことが非常に重要です。
まとめ
今回の事例の最大の成功要因は、「手遅れになる前に、早めに家族信託の準備をしたこと」です。
もし対策を先延ばしにして親の判断能力が完全に失われてしまうと、預金口座は凍結され、費用や手間の負担が大きい「成年後見制度」しか選択肢がなくなってしまいます。認知症の進行スピードは予測ができません。
「最近、少し物忘れが増えてきたかも…」と感じた時が、対策を始めるベストなタイミングです。親御さんの大切な財産を守り、将来のご家族の負担を減らすためにも、不安を感じたらまずは早めに専門家へご相談ください。




